笑顔に自信「マウスピース歯列矯正」リモート治療広がる D2Cで負担減 | 産経ニュース
3Dスキャンで歯形を取り、マウスピースを製作する「オーマイティース」=東京都豊島区(重松明子撮影)

笑顔の印象を決める歯並び。矯正治療のハードルが下がってきた。一般的なワイヤ矯正に対して透明で目立ちにくく、着脱可能なマウスピース矯正が広がっている。D2C(Direct to Consumer=製造者が消費者に直販する手法)で、利便性と低コストを両立するITシステムが開発され、新規参入が目立っている。歯並びに対する意識が低いといわれてきた日本人だが、インスタグラムやZoomの普及で笑顔の〝映え〟意識が高まり、需要を押し上げている。
1日20時間装着 自己管理は必須
池袋駅直結の東武ホープセンター内に7月末開業した「東京池袋矯正歯科」。日本初のD2C歯列矯正を展開する「オーマイティース」の導入医院である。
歯科医が棒状のスキャナーを患者の口に入れると、モニターに歯の状態が立体映像で映し出される。続いてレントゲン撮影。診断は約30分、原則1回のみで無料だ。帰宅後、LINE(ライン)に届いた矯正イメージを承認すると、オーダーメードのマウスピースキットが直送される。矯正段階に応じて付け替え、アプリで撮影した歯の状態を送信。リモートで歯科医のアドバイスを受けながら矯正の「ゴール」を目指す。
令和元年末にスタートしたオーマイティースは、前歯上下12本の標準コースが一律33万円。治療期間は平均3カ月。東京と大阪の提携4医院に、これまで7千人超が来院した。「従来の歯列矯正は100万円程度の出費が必要で、通院の負担も大きい。ITで金銭的、時間的なハードルを下げれば、歯並びに自信がない人たちの潜在需要が掘り起こせると考えた」と西野誠CEO(最高経営責任者)=(28)。
元々ITエンジニア。起業し、サービス開始2カ月で発生したコロナ禍も追い風となった。「Zoomで自分の歯並びを見る機会が増えたこと、自宅で治療できることでも注目された」
客層の6割が男性で、20代後半~30代前半が中心、中学生から最高齢は77歳。歯と歯茎が健康であれば高齢者も可能という。来年中に大都市圏、20拠点に提携医院を拡大する計画だ。
抜歯が必要な重度には非適応で、すきっ歯、乱杭歯、少し前歯が出ているなど軽度の症状に向く。食事中はマウスピースを外せるが、1日20時間以上の装着を要し、達成後も固定のための装着が適宜必要。ハードルが下がったとはいえ、自己管理は必須だ。
「始めやすい矯正である一方、歯科医の技術には個人差があり、不調を訴える声もネットで散見される。経験豊富な矯正歯科医は東京に集中しているが、オンライン診療であれば地域格差なく、遠隔地にも精度の高い治療が提供できる」
エキサイトの平賀大貴さんは、自身のマウスピース歯列矯正体験をもとに新事業を立ち上げた(重松明子撮影)

女性向け情報サイトを運営するエキサイト、メディアプラットフォーム事業部・D2C部の平賀大貴マネジャー(30)が狙いを語った。昨年9月、新規事業のマウスピース歯列矯正「エミニナル」を始めた。
希望者は全国各地の提携歯科医(約50医院)を訪ね、歯や顔貌のデータを取得。それを基に製作されたマウスピースが送付され、東京の矯正歯科医がオンライン診療を進める。
予算は35万円前後、治療期間は平均9カ月という。
笑顔がきれいな平賀さんは、大学時代にマウスピース矯正を経験。「やってよかった」思いから新規事業を企画した。「以前は前歯がすきっ歯で、笑っている写真がありませんでした。食事時の外す、着けるが面倒で間食もしなくなり、ダイエットにもなりました」
外見で人の価値を測る「ルッキズム」が批判されているが、「より美くしく」を求めるのも本音だ。マスクを外す日も近づき、さらに需要が高まるか⁉(重松明子)